男木島牛小屋再生計画

男木島は2015年現在およそ120世帯ありますが、その多くは空き家や廃屋となっています。普段は住民の居ない空き家なのですが盆や正月などの長期休暇を利用して帰省される際に利用される家以外は、1年〜長いものだと40年以上放置され続けている家も存在します。また、その中から雨漏りや地盤沈下から来る家の傾きなどで雨水などが侵入するなどして、家の傷みを進行させたり、換気などを行わないのでシロアリ被害を予防できずに崩れていくパターンが多く見受けられます。男木島の島民自体高齢化を迎えており直ぐに対応できなかったり、登記不十分で家屋の管理人が分からなくなっているケースも少なくありません。そのような空き家や廃屋問題を抱えていますが、男木島生活研究所の拠点として戦後に建てられた牛小屋をリノベーションして事務所として再生する計画を建てました。わたしたち男木島生活研究所は男木島に残る古民家や再生可能な建物を有意義に利用・再生する事に意義や価値を見いだしています。この建物自体は稲作が出来なかった男木島ならではの伝統であった借耕牛(かりこうし)と呼ばれた牛たちの牛小屋です。写真の通り、ベニヤで土壁を隠し、土間だった部分はコンクリートで補強して物置として利用していました。


既存1F内観02

既存2F内観02

このような梁などが現在の建物では見る事ができません。戦後すぐの間もない頃に曾祖父にあたる福井幸吉が自分の林にあった木を切り出したりしたものを利用したりして組み上げたと聞いています。このような意匠を残し、尚かつ利用できる状態にするのが今回の最大の目的です。

既存外観01

奇跡的に雨漏りはしていませんでしたが、セメント瓦もやせて耐久性には大きな問題を抱えていました。

既存外観02

男木島の冬は西からの風が強く吹き付けるので、このように西側部分には窓は存在していません。

今回のプロジェクトを後輩でもあるスペルワークス主宰の建築家カワニシノリユキ氏に依頼しました。リノベーションのポイントは男木島の建物の良さを残す事。そして、もうひとつは耐震化工事の為取り壊される事になった男木小中学校旧校舎の一部を利用するという事でした。