アワビの稚貝を放流して思った事

東瀬戸漁業協同組合の男木青年部で、徳島県海陽町にアワビの稚貝を買い付けに行って来ました。東瀬戸漁業協同組合は男木島と女木島の両組合が漁業従事者(組合員)の減少の為、平成25年1月に新たに合併し発足した組合です。

男木島生活研究所のメンバーにも若手からベテランの組合員が在籍し(私も准組合員)、NPOとして干しえびの販売やワカメの養殖を研究して6次産業化にも取り組んでいます。

参考:男木島生活研究所の干しえびの記事

鮑

男木島から約5時間の道中で、先輩組合員からかつて男木島で行なわれた様々な養殖業や漁師や漁獲高の変遷など、男木島の漁業の変遷を色々興味深い話を聞く事ができました。そして今回のアワビの稚貝の放流事業。組合ではアワビだけではなく、クルマエビ、アコウなど比較的相場の高い種類を放流しているとの事。これだけの種類を放流しないといけないという事は、瀬戸内海に囲まれた男木島であっても水産資源には恵まれていないんでしょうか?

データでみる香川県の水産業

漁業従事者が減れば、それだけ競争相手も減って収入も増え、取り尽くせないから資源が増える!そんなに甘い状況ではないようです。

資料:統計で見る香川の農業・水産業

資料ののっけは、こんな書き出しで水産業については書かれています。

本県の漁業就業者は、就業者の高齢化もあり、減少傾向が続いている。
平成 25 年の就業者数は 2,484 人で、前回調査時(平成 20 年)に比べて 734 人(22.8%)減少 している。

なかなかの減少率です…。それを裏付けるように生産額は約6割程度になっています。

海面漁業・養殖業別生産額の推移
平成12年308億円→平成25年181億円。

資料:農林水産省「香川農林水産統計年報」

引き続き、男木島でも馴染みのある魚種別の生産額をみてみます。

主要魚種別生産額

(単位:百万円)

平成21年 平成25年
カタクチイワシ 1,553 1,234
サワラ類 200 367
ヒラメ 148 89
アナゴ類 200 176
クルマエビ 105 45
その他のエビ類 686 574
タコ類 1,133 807
カイ類 357 145

資料:農林水産省「香川農林水産統計年報」、農林水産省 HP「漁業・養殖業生産統計」

サワラは漁獲制限の効果もあって近年生産高が増加していますが、クルマエビやカイ類は半分以下の数字となっています。むむむ。

そう言えば、男木島に戻って来ての3年間で食卓に並ぶ瀬戸内の魚が少し変わって来たように感じます。例えば、夏のママカリ、秋のイワシにアジ、冬のイイダコ、ニベ。あれれ?結構な種類の魚です。ママカリやイワシなんかは釣れすぎてもらってくれる人を探す方が大変なぐらいでした。

今回は個人的に気になった&資料もそれに関する個所だけを注視したので全体的な読み込みが足りません。資料からだけではなく、伝聞などを踏まえても漁獲高の減少が漁業従事者の減少を招いた一因はあると思います。漁獲高の減少の理由も乱獲や環境の変化などいろいろな要因が重なってだとは思いますが、近い将来瀬戸内海で獲れる魚が一変する可能性は否定できないような気がします。

それを受けて放流事業のように育てる漁業にシフトして来た事も十分頷けます。代表的な例として、オリーブハマチのようにブランドを確立して商品価値を高める戦略は大いに見習うべき取り組みではないでしょうか。偉そうに書いてしまいましたが、6次産業に取り組んでいます!と言っても基礎となる1次産業が衰退してはどうにもなりませんよね。最後までまとまりがありませんでしたが、少しでも漁業が今度どうなるんだろう?と気になったなあと思って頂ければ幸いです。