瀬戸内海歴史民俗資料館による「男木島調査報告会」が開催されました

6月21日(日)の朝9時半、男木コミュニティセンターのホールに島の人たちが集まりました。定員30名のところ満席。瀬戸内海歴史民俗資料館の皆さんによる「男木島調査報告会」のはじまりです。

この報告会は、7月4日から開幕する企画展「男木島 民の道具と声 ―島で紡がれた暮らしの記憶―」に先立ち、昨年末から続けてきた調査の成果を島の皆さんにご報告するために企画されたものです。
調査、報告会はNPO法人男木島生活研究所・NPO男木島図書館も協力しています。


3つの視点から「男木島」を読み解く

当日の瀬戸内海歴史民俗資料館よりの報告プログラムは3部構成で行われました。

館長の松岡明子さんの挨拶に始まり、まず岡田達哉 さん(瀬戸内海歴史民俗資料館専門職員)が調査全体の目的と概要を紹介。昨年の冬以来、何度も島に足を運び、80代・90代の島の方々を中心に聞き取り調査を進めてきたことが報告されました。

続いて、小野秀幸さん(瀬戸内海歴史民俗資料館主任文化財専門員兼主任専門学芸員)による 「原始・古代の男木島 ―考古学から―」
島内に登録されている8つの遺跡をひもとき、古墳の痕跡や石器時代の可能性についての報告がありました。草木に覆われてなかなか現地確認ができない遺跡もあり、「秋口にもう一度チャレンジしたい」という言葉に、調査の粘り強さが感じられました。

休憩をはさんで、小野祐平さん(瀬戸内海歴史民俗資料館主任専門職員)による 「江戸・明治初期の男木島 ―歴史学から―」
瀬戸内海歴史民俗資料館に所蔵されている直島三宅家文書をもとに、江戸時代の男木島の人口・産業・山の利用方法などが紹介されました。年貢は米でなく麦が中心だったこと、島の男たちが10月から4月は各地のイワシ漁へ出稼ぎに行っていたこと、明治期には直島とのアジロ場(漁場)をめぐる裁判があり、最終的に男木島側が勝訴して村中で玉姫神社に集まって飲み明かしたこと。しかしそれだけではなく裁判はその後も続いたことなど、文書のなかから、生き生きとした島の人々の姿が浮かび上がってきました。

3つ目は、田井静明さん(瀬戸内海歴史民俗資料館専門職員)による 「昭和〜現代の男木島 ―民俗学から―」
戦前期の記録や昭和39年の調査報告を読み解き、女性たちが頭上に水桶や荷物を乗せて運ぶ「頭上運搬」の文化、島独自の婚姻のあり方、葬式の慣習、盆踊りや男木島の大祭における「にわか」という役割など、男木島の民俗の豊かさが語られました。「香川県内でここにしか残っていない」といわれる習俗がいくつもあることも、改めて印象的でした。


写真と記憶が交差した質疑応答

報告後の質疑応答は、男木島生活研究所の福井大和と男木島図書館の額賀順子が進行を担当。田井静明さんが調査で見つけた男木島の古い写真を1枚1枚映しながら、「これはどこの浜ですか?」「この建物は?」と島の方々に問いかけると、会場があちこちで沸き立ちました。

「裏の浜やね」「いや、じょうの浜と違う?」「あのカフェがあるところの、下のあたりや」——かつての地形や建物の記憶が次々と呼び起こされ、専門職員の皆さんもメモを取りながら聞き入っていました。

また、今回の聞き取り調査で初めて分かったこととして紹介されたのが、島内で糸車や唐箕が作られていたという事実。「うちにあるわ、壊れてるけど」という声が会場からあがり、「よく見たら職人さんの名前が入っているかもしれないので、ぜひ確認してみてください」というやりとりになりました。こういう瞬間に、調査と地域が本当につながる感じがします。


記憶を記録することの意味

西村望さんが書いた『男木島の歴史』のあとがきが、報告の最後に紹介されました。「去年あって聞いた老人に、今年また同じことを聞きに行ってみる。去年は詳しく教えてくれたその老人が、今年はもう声がないのである」——この言葉が、今回の調査の根っこにある切実さをよく表していると思います。

昨年末から何度も島へ足を運び、聞き取りを重ねてきた資料館の皆さん。その調査の一端が、この報告会で島の人たちと共有されました。記録することは、ただ過去を保存するためではなく、今ここで暮らす人たちが「自分たちはどんな島に生きているのか」を考えるための手がかりになる——そういう思いが、3時間の報告会全体を通じて伝わってきました。


いよいよ来月、企画展が始まります。

瀬戸内ギャラリー第20回企画展
「男木島 民の道具と声 ―島で紡がれた暮らしの記憶―」

会期: 2026年7月4日(土)〜8月30日(日)
会場: 瀬戸内海歴史民俗資料館 瀬戸内ギャラリー(高松市亀水町1412-2・五色台山上)
開館時間: 午前9時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日: 月曜日(月曜が祝日の場合は翌火曜日)

文書・漁具・運搬具・葬式用具など約60点が並ぶ展示です。また8月23日(日)には香川県立ミュージアムにてトークイベント「男木島のアイデンティティって何だろう」も開催予定(定員70名・先着順、7月23日より申込受付開始)。

ぜひ五色台山上まで足をお運びください。

詳細は瀬戸内海歴史民俗資料館のウェブサイトをご覧ください。

調査時の様子